「行動経済学」という分野は以前から興味があったので、タイトルが刺激的な「行動経済学の逆襲」を読んでみました。
著者はノーベル経済学賞を受賞したリチャード・セイラーさんです。
本書は「行動経済学という分野がいかにして市民権を得てきたか」の歴史を知ることができる本で「行動経済学 勝利への歴史」というタイトルにした方がしっくりくる内容になっています。
現在はノーベル賞が出るほど市民権を得ている「行動経済学」という分野ですが、相当の苦労があったようです。その苦労と「行動経済学」という分野の挑戦と成長を面白く紹介しています。
全然市民権がなかった分野に没頭してやり抜く力はさすがと言ったところで、本題ではありませんがこの行動力やパワーも参考になります。
どういう人におすすめか?
行動経済学ってよくわからないけど面白そう!
と興味を持っている人はもちろんですが、
心理学なら好きだよ!
という人にもおすすめの本です。
というのも従来の経済学とは数式などの完璧な理論で厳密に構成され、人間らしさは一切考慮されなかった分野でしたが、そこに心理学的視点を加えたのが行動心理学だからです。
時系列で書かれていて例示も多くサクサク読める内容になっているのでおすすめです。
人は合理的には動かない
著者は常に合理的に動く理想の人を「エコン」と呼んで、現実世界の人間の行動を「ヒューマン」と呼んでいます。
「ヒューマン」は「エコン」では説明できないようなおかしなふるまいをたくさんします。
例えば、通常100円のおにぎりが10円で売っているなら1km離れた店に15分かけて行ったりするが、50万円のテレビが1km離れた店で49.5万円で売っていてもわざわざ行かなかったりします。
これは、それぞれのモノに尺度をつけて、そこからの減り具合で判断する「ヒューマン」の特有のものだそうです。
つまり、おにぎりは90%も値段が下がっているのに、テレビは1%しか値段が下がっていないと判断するのです。
「エコン」なら90円得するために1km離れた店に行くなら、5000円ならなおさら1km離れた店に行くと考えるそうです。
実体験としてもわかる気がしますね。
このようなヒューマンの矛盾した行動とそれを説明する仮説とその反論との闘いが多く書かれていてます。
ちなみに、お得感やぼったくり感といった「取引効用」はヒューマン特有のものだそうです。
人は「状態」ではなく「変化」に反応する
納得した行動経済学としては人は「状態」ではなく「変化」に反応するというのがありました。
例えば、いくら高年収の人でもやがて嬉しさは薄れていきますが、少額でも臨時収入があると大喜びしたりすします。
スマホ代を一括で払えるのに分割で少しずつ払うのが喜ばれるのもこの特性が関係しているのかもしれません。
その他にも
- 将来のお金より現在のお金を重視したり
- 保有している物の時間が経過すると価値が上がると考えたり
- 勝ち組が勝ち続ける負け組は負け続けると考えたり
などの特性も紹介されていました。
特に勝ち組にが勝ち続ける/負け組が負け続ける理論が成り立たないことは株式市場のデータから証明されていましたが、GAFAMが勝ち続ける訳ではない事は肝に銘じておかなければいけませんね。
株主にとって有利な点が多いアメリカ市場ですら勝ち続けると考えない方がいいのかもしれません。
まとめ
ノーベル経済学賞を受賞者の本ということで、とりあえず読んでみましたが面白い本でした。
近年、注目されているナッジ(肘で軽く押す)効果まで触れられていて行動経済学というものの概要と歴史がわかるようになります。
興味を持たれた方はぜひ読んでみてください。
私は行動経済学という分野にもっと興味が出てきたので、入門書を一冊読んでみたいと思います。
ではでは。
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